「カスタマーサポート」「顧客第一主義」はもう古い。ビジネスを大きく飛躍させる「カスタマーサクセス」とは何か。

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San Francisco Bey area(俗にいうシリコンバレー)では当たり前となっている考え方とその取り組み「カスタマーサクセス」。

「カスタマーサポート」はよく耳にするが、「カスタマーサクセス」とは一体どんなものなのか?

「顧客第一主義」とは何が違うのか?

ソフトウェア業界の言葉とされているが、そこに限らないすべての業種のビジネスにおいて必要とされるであろうその考え方「カスタマーサクセス」を、探求する。

カスタマーサポートは「受動的」、カスタマーサクセスは「能動的」

よく耳にする「カスタマーサポート」。それは、顧客が困って問い合わせしてくるのを待っている「受動的」な問題解決窓口であり提案するのは対症療法だ。

一方で「カスタマーサクセス」は、一言で言えば「顧客の成功(幸福・満足)を、能動的に支える」ものだ 。(Customer Success Association)

「カスタマーサクセス」の考え方では、顧客の成功を支えることを目的として常に問題の根本を「能動的」に見つけ、情報を取得・精査しながらプロダクトの開発・改善、顧客の利用継続の促進をしていく

 Airbnbが急成長したのはカスタマーサクセスができるようになった時

Airbnbの急激な成長が始まるのは2012年だ。その同じ頃に、Airbnbでは、電話対応でしっかりと顧客の対応ができるようになった。

Airbnb cofounders Nathan Blecharczyk, Joe Gebbia and Brian Chesky.

Airbnb 創業者のJoeは創業初期、常に頭にヘッドセットをつけているのを何度も見た。彼はノンストップでカスタマーからの電話を取り続けていたんだ」(Kevin Hale – Partner, Ycombinator)

彼らは、ただ問題や不満を聞いて対症療法的に対応するカスタマーサポートをすることをやめたのだ。

自分たちで直接顧客と対話を能動的に行い、並行して様々な情報収集や分析をすることで、どのようなことが顧客に必要とされているのか、根本的な問題はどこにあるのかを見出し、プロダクトの改善を図っていった。

それによって、単純な広告よりも大きな価値を持つ、webとリアルでの口コミによってそのサービスの価値は広められていったのである。

「デザイン思考」との違いはそこにある。とりわけアイディアの創出の際に、ユーザーの潜在的需要を引き出すものが「デザイン思考」だが、「カスタマーサクセス的思考」というならば、それは事業創出の際だけでなく、ビジネスの運営や変遷を常に支えるものとも言える。

カスタマーサクセスに基づいた運営が生み出す価値とは?

能動的な顧客との接点(直接の対話以外にも、観察や調査による情報収集を含む)を持つことによって、改善を図ることは主に何を生み出すのか。

1.「継続利用」

顧客の離脱は、すなわちその顧客からの収益がゼロになることを意味する。その離脱がなくなるだけで多くのビジネスは飛躍的に向上する。

離脱には必ず何かしらの理由があり、あなたのプロダクトに不必要性や他の何かでの代替可能性を感じたのかもしれない。

能動的に顧客との接点を持ち情報を集めると、どこに改善点があるのか、価格なのか内容なのか、仮説ではなく事実と向き合うことができる。明確な回答を見出して、効果的な改善を打ち出すことは、顧客の継続利用を促進できることにつながる。

2.「単価や頻度の向上」

すべての顧客の利用頻度が2倍になる、単価が1.5倍になる、などといった変化も収益へ多大な価値をもたらす。

顧客の観察や情報収集、対話から、より利用頻度を高めるには、より高い価値を感じてもらうには何が必要かを見いだすことができる。

実際に、UBERは利用頻度が高まるための最適な価格が、顧客に提示されるよう、丁寧に価格をコントロールしている。

その先に、ビジネスの飛躍的な向上があることを、彼らは知っているからだ。

3.「新規顧客の獲得」

どんな広告よりも集客に効果的なのは、紹介と言われている。BtoBのビジネスの購買プロセスにおいては実に84%が紹介から始まっているのだ

顧客との対話から、まだ見えないところにどのような顧客がいるのか、既存の顧客が紹介したくなるためには何が必要なのかを見出すことができ、その回答は新規顧客の獲得に大きく貢献される。

ソフトウェアに限らない、「顧客の成功」のために開発・改善をする意味

冒頭でも触れたようにカスタマーサクセスは「顧客の成功(幸福・満足)を、能動的に支える」ことだ。

ここでの「成功」とは広義の意味での「成功」だ。あらゆるプロダクト(物・サービス・システムを含む)において、顧客があなたのプロダクトを通じて獲得できる幸福・満足(成功)を示す。

「顧客の成功」を支えるためにプロダクトを精査することは、様々な業種においても必要なものである。

例えば、「週休3日」を推奨しているaisaac社内でも人気のホットヨガについて考えてみる。

ヨガを習いに来る顧客の目的は、ダイエット、集中やリラックス、技術向上など様々である。

そこでの「顧客の成功」は、「脂肪を燃焼できた」に始まり、それ以外にも「集中できた」「リラックスできた」「技術が伸びた」などになる。

優秀ではない講師がいたとすれば、その講師はダイエット効果だけを「顧客の成功」と捉えてしまうかもしれない。「集中」できるためのスタジオの環境作りへの配慮や、技術向上に関するアドバイスなどが、不足するだろう。生徒から何かを言われたらカスタマーサポート的に受動的な対応をするかもしれないが、それでは顧客の継続利用や、頻度向上、紹介などは得られない。

一方で優秀な講師は全てに注意を払いながら、各顧客が満遍なく成功(満足)を獲得できるよう、能動的に対話や観察を行い、自分のレッスンを開発・改善していく。そのようなレッスンには多くの人が成功を感じて、継続利用をし、頻度向上、紹介などの口コミをしていくだろう。

「私にとっては非常に評価が高い」=「好き」を創造する。

顧客の目線に立って考えてみよう。

「顧客の成功(幸福・満足)を、能動的に支える」というカスタマーサクセスは、顧客に何を感じてもらうべきなのだろうか。

ヨガの例のように、カスタマーサクセスを意識して作られたレッスンを利用するユーザーは、「受動的にそのレッスンを受けていることで、不満や問題なく成功に導かれる」と感じる。逆にカスタマーサクセスの意識が不足しているレッスンのユーザーは、「能動的に言わないと対応してもらえない」と感じてしまう。前者においてレッスン生が感じるのは、その講師に対する絶大なる評価だ。

顧客が「顧客の成功」を体験すると、顧客が感じることは「私にとっては非常に評価が高い」、つまり「好き」というものになる。

戦略的な統計分析を用いて、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの入場者数が東京ディズニーシーを上回るという偉業を達成し、収益を飛躍的に向上させた森岡毅さんは言う。

「市場競争とは、一人一人の購入意思決定の奪い合いであり、その核心はプレファレンス(好み)である」

市場で選ばれるためには、認知度や配架率をあげることももちろんだが、何よりも「より多くの顧客に好きになってもらう」ということが大事だということだ。

実際の、森岡毅さんの戦略の肝は、より多くの顧客に「好き」になってもらうことを考え、「映画好きのためのテーマパーク」から、「世界最高品質のエンターテイメントを提供するテーマパーク」という大きな事業コンセプトの転換を行ったことだ。

コンセプトの転換前には社内外からの多大な反対があったが、潜在的な顧客への調査を能動的に行い、論理の裏付けを持って、全ての根底にあるのが「カスタマーサクセス=顧客の満足・幸せ(成功)」を見据えた顧客の「好き」を増やすことだということを示し、それを実行に移した。

結果、「継続利用」「単価や頻度の向上」「新規顧客の獲得」が生まれ、集客と収益は爆発的に伸びた。

「顧客第一主義」との違いはここにある。森岡毅さんが「顧客第一主義」を取っていれば、既存顧客の映画好きのために、他のエンターテイメントを入れることはなかったかもしれない。見えない将来の顧客を見据えたカスタマーサクセス的思考で、能動的に顧客と対話をしたからこそ、大きな結果を生み出す転換を見出すことができたのだ。

あらゆるものが競争相手となる。

顧客に好きになってもらうための競争相手は、何になるであろうか。

現代は、「第三の産業革命」としてものの消費が激しく、無料で使えるものが増え、時間の使い方を転々とする頻度が上がってきている。(佐々木俊尚)

多様化した中で、顧客はあらゆるものに時間を使っているため、人々があなたのプロダクトに時間を使うという選択を行う際の競争相手は多様だ。

今や一般的に「競合」と言われる同業他社だけが競争相手ではないのだ。潜在的な顧客や収益を見つけ出すには、既存の意識とは別の形で、人々(将来の顧客)と対話をする必要があるかもしれない。

そうした中でビジネスをするには、「横を見る(他社との差別化を図る)のではなく、前を見る(顧客、人々の成功を支えるために向き合う)」ことが必要になっているのだ。

そのカスタマーサクセス(顧客の成功)を意識した開発・改善によって、どこにもない新たな価値を顧客が感じるものが生まれ、あなたのプロダクトが選ばれるようになる。

まとめ

時代は、受動的なカスタマーサポートから、能動的な情報の取得と思考であるカスタマーサクセスへと移っている。

顧客にとって、「受動的にそのプロダクトを利用していることで、不満や問題なく成功・幸福・満足に導かれる」というものがカスタマーサクセスを携えたプロダクトだ。

顧客が能動的に質問や問い合わせ、作業をせずとも、最低限の必要な行動だけでそのプロダクトを通じて成功・幸福・満足を獲得できるように、あなたのプロダクトを設計するということが大切になる。

そしてそのプロダクトの開発・改善を通じて

「私にとっては非常に評価が高い」=「好き」という評価を獲得し、

「継続利用」「単価や頻度の向上」「新規顧客への紹介」を獲得していく。

それが、多様な情報や物・サービスで溢れる中であなたのプロダクトを選んでもらう人を増やし、ビジネスを飛躍させることにつながる。

参考

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